MCC Duoとは
青木理恵と猪俣恭子のふたりのMCC(国際コーチング連盟マスター認定コーチ)による
- コーチングセッションと解説
- コーチングトーク
※ICF(International Coaching Federation)とは
米国・ワシントンDCに本部を置き、コーチングにおいて世界で最も信頼され、権威のある団体。
コーチング業界、ならびにコーチの社会的地位を確立することを目的に、1995年に設立され、グローバルに発展するコーチングの倫理とコンピテンシーを定めている。
ICFの認定資格は「コーチの倫理とコンピテンシー」に基づき、「世界的なコーチの基準を満たしている」と判断されたコーチにのみ与えられる資格。
世界各国において「コーチとして専門的な教育を受けたこと」の証明となっており、コーチの世界基準とされる。
目次
インタビュアー
3-コーチとして大切にしていること
MCC Duoがそれぞれ大切にしていること、そして今も心に残る自身のコーチとのセッション
その真逆的なものを、どうやって扱うんですか?
そのために、常に同じ自分でいられるよう、人間の器を広げる努力をしています。
決めつけたり、判断しないように。
究極のコーチは、クライアントの本音、隠された心の声に到達できる人だ、と思います。
クライアントに「本当はこう思っているのよね」と「ほんとうの自分」と向き合うことを恐れずに、一緒にその場にいることができる、という。
クライアントの「本音」を分かち合い、一緒に喜べるのがコーチとしての喜びかな。
青木さんって、その人が話していないことを聞きとる力がすごくある。
価値観とかニーズとかこだわっていることとか。
青木さんは、そういう「人の本質的なところ」を批判したり否定したりしないじゃないですか。
だから、クライアントはほんとうの自分を知ることを楽しみつつ、チャレンジできるんですよね。
私は、人を愛していますね。人間が、大好きなんですよ。
人の生き様に興味があります。
だから、みじめだったり、情けなかったり、どんなひどい局面においても、自分でも不思議なんですけど、絶対にいいところを見つけられるんです。
ニューヨークやロンドンの地下鉄では、ホームレスや日本では見ないくらいに心を病んだ人を見かけることがありました。
でも、私は、彼らの笑顔を想像することが出来るんです。
世の中で叩かれている人の心の痛みや心の叫びをキャッチできる自分は、コーチとして成長したと思えます。
昔は、世の中からはみ出してしまった人や弱者に対して、このような感性は持っていなかったと思うんですよ。
それが、コーチングを学びながら高い人間性を求めて生きていく上で、プチマリア(笑)になっていったというか…。
私は、どんな人にも良心があることを信じているし、私はたぶん、その良心をとらえることができるのでしょうね。
猪俣さんがコーチとして大切にしていることは何ですか?
本当はその問題を解決するのは相手自身なのに、自分のほうが一生懸命になって解決してあげたくなるというか。
相手が上手くいってほしい…と心から願うけど、人は上手くいかない時、解決策が見つからず悩んでいる時、落ち込んでいる時、そういう時だからこそ学べることがたくさんある、と私は信じています。
そう、人には失敗する権利があるというか。
だから、クライアントがどんな話題を取り上げたとしても、それに反応しすぎないことがとても大切だと思っています。
「クライアントと自分との間に、いいあんばいのスペースができているか」が、コーチングの質を左右します。
そのスペースがあれば、コーチである自分がクライアントとクライアントをとりまく環境を俯瞰して見られるようになります。
クライアントの問題をなんとしても解決してあげたい…と一生懸命になりすぎると、お互いの間にスペースがうまれません。
ですから私の場合は、ユーモアを持ち合わせていたり、大らかな状態であることが欠かせないですね。
スキル云々も大切ですが、自分という在り方を整えることの深さを考えさせられます。
4-コーチングを受けた印象深い体験
思えばそれまで、親や先生からもらえたのは、良い結果を出した時だけ褒められる「結果承認」でした。
たとえ良い結果を出しても「自分の力ではない。運や先生のお陰。まぐれで良い結果が出ただけなのだから、いい気になってはいけない」と言われ続けて育ってきました。
だから、私は人からの褒め言葉や承認を受けとるのが苦手でした。
口では「まだまだです」とか「そんなことはないです」とか言いながら、心の中では、これはお世辞なんだから、うかつに人の言うことを信じちゃいけない…と思っていました。
いやぁ、寂しい性格ですね。
「やってみたい」と言っただけだとしても、その最初の思いをきちんと受けとめて、その思いが芽生えたことを心から喜んでくれました。
その瞬間、温かい波のようなものが怒涛のように押し寄せてきて、生まれてはじめて心が満たされていくのを感じたんです。
「まだ結果も出ていないのに、こんな私を信じちゃっていいの・・・?」
コーチのその在り方に戸惑いつつも、「よ〜し! やるぞ〜〜」とエネルギーがみなぎってくるのを感じました。
コーチによい報告をしたい、一緒に喜びあいたい…という思いで、モチベーションも行動もアップした私は、期待以上の結果をはじき出すことができたんです。
ICFのプロフェッショナルコーチの試験に合格した時のことです。
思わず「合格できました。コーチのおかげです」と言った私にコーチは、「いえいえ、すべての結果はあなた自身のものです。僕は、スタートとゴールに到達するまでの目撃者にすぎないから。結果は僕のものじゃありません」と言われ、びっくりしたことがあります。
「いいえ。まぐれですよ。きっと、すれすれ。ビリで合格したはず」と言いはる私を見て、コーチは笑いながら言いました。
「ビリだってどうしてわかったんですか? もしかしたら、トップかもしれないですよ(笑) 合格は合格です。その事実だけを見てみたらいかがですか?」と言われました。
今、自分に見えている事実だけを受けいれる。
そのことは当時の私にとって、とてもエネルギーが必要なことでした。
でも、コーチの立ち位置、クライアントを信じること、力強い承認に圧倒されたことを今でもよく覚えています。
それは、私が目ざしたいコーチの姿になっているんです。
お話から青木さんの気持ちが伝わってきて、感動しました。
猪俣さんには、どのような体験がありましたか?
2004年当時、すごく悩んでいたんです。
家業の印刷会社で働いていましたが、本当は人材育成の仕事がしたくて。
自分がやりたいことを優先して会社を辞めたら、父や社員を裏切ることになってしまう。
それは避けたい。
やりたいことがあっても、それを我慢するのが人生なんだろうか。
そんなことをつらつらとコーチングセッションで話したことがあります。
気づいたら20分は話し続けていました。
コーチは「うんうん」「そう」と相づちだけでしたね。
ずっと我慢してためていた私の思いが解き放てるよう、最後まで耳を傾けてくれました。
ひとしきり話し終わって、一息ついた時です。
コーチがはじめて口を開き、こう言いました。
「猪俣さんは、お父さまと会社を心から愛していらっしゃるんですね。」
それまで自分のことを親不孝と責めていたくらいですから、びっくりしました。
私が父と会社を愛している?!
ぱっと目が覚めた思いでした。
そして緊張していた心がほどけていくような温かさを感じました。
責めていた自分を「そんなことはない。大丈夫」と許せる気さえしてきました。
続けてコーチはこんな提案をされたんです。
「猪俣さん、印刷会社を辞めるか辞めないかだけではなく、印刷会社を続けながら猪俣さんのやりたいことができる選択をつくってみませんか?」
と。
これがいわゆるコーチングスキルの一つ、「選択肢を増やす」だったことに気づくのは随分と後のことでしたが。
このセッションの時から、私は変わったと思います。
それまではうつうつした気分で働いていて、社員にかなり厳しく接していたんですよ。
でもこのセッションをきっかけに、社員の愚痴や不満を聞いてみようと思えるようになったのですから、不思議です。
心にゆとりが生まれたんでしょうね。
コーチの聞く力と聞こえたことを相手に伝えることの影響の大きさに、今さらながら驚きます。
どこから「私が父と会社を愛している」ということが聞こえたんですか、って。
だって、直接そんなことは話していないんですから。
そしたら、何て言ったと思います?
「んー、どこからだろう? でも聞こえてきたんだよね。猪俣さんがそう思っているって」
もうこのコーチにはかなわない、と思いました。
私という存在を一人の人間として見ていてくれていることが感じられて、今でも感謝しています。
私もそういう聞き方ができるようになりたい…と、一生忘れられない、忘れたくない体験です。
コーチングやコーチの素晴らしさを感じられる、それぞれのエピソードです。
そういう体験がおふたりの今に、つながっているんですね。